複素積分について勉強したでしょうか.私は数学者ではありませんが,昔,ある大学で,線形代数とか,複素関数論とか,数学の基礎科目の講義を一通り担当していました.毎週6~7コマ担当なので,結構疲れて,肩が痛かったです.その当時は,お前の仕事は講義と大学の雑用で,お前の研究成果なんて誰も評価しないぞ,というような環境でしたが,研究は好きだったので細々と続けていました.ということで,昔作成した図を使って,今回は複素積分で印象に残しておいてほしいポイントをまとめます.
不定積分が存在するときの積分
ここから,ラフに説明していきます.「不定積分が存在するとき」というのは,積分したい関数に,
となる相手がいるときです.高校で習う積分の公式があるようなときです.積分経路を含む領域で正則だったら,その領域で,積分は積分経路によらず,端の点の値だけできまります.正則というのは,その点で微分できると言うことです.コーシー・リーマンの方程式が何かも知っておいてください.
コーシー (Cauchy)の積分定理
ここから単一閉曲線での積分です.「単一」は自分に交わらない,「閉曲線」はぐるぐる何周でも回れるようにつながっているということです (下図).例えば,円です.いつも左周りが正の向きです.
まずは,計算せずに答えを0と書ける,お得なパターンです.
以下のような問題に出会ったら,答えは0だと,3秒以内に気づいてください.
問題 を任意の単一閉曲線とするとき,次の積分を求めよ.
周回積分と積分路
周回積分の積分経路を変えられるという話です.証明は,下の図のように経路を切ってみるという,気づければ意外と簡単なやつです.
コーシーの積分表示 (コーシーの積分定理)
被積分関数に,微分できない穴 (発散する点)があるときの積分です.分母がゼロになる点は,穴とか,トゲとか,針とか,そういうイメージをもってください.ここで穴と呼んでいる点の,専門用語は「特異点」です.上で説明した性質を使って,積分経路を,穴へ縮めていけば証明できます.
積分の公式的に使いたいときは,以下の印象をもっておいてください.
以下のような問題に出会ったら,10秒以内に答えを書いてください.
問題 を原点を中心とする半径2の円とするとき,次の積分を求めよ.